教師用ガイド · レッスン1
ハエがにおいを覚えるしくみ
本物のハエの脳ににおいを送りこみ、それをどこで覚えているかを見つけましょう。
レッスンのアドレス: wiredmind.app/ja/modules/smell-memory
学習目標
生徒は、においが受容ニューロンから記憶を読みとる細胞まで伝わる道すじをたどり、経路の1つの層をオフにすると、その先がすべて断たれることを示します。
用意するもの
みんなで見られる画面があると便利ですが、必須ではありません。プロジェクター、テレビ、クラス全員に見えるパソコンの画面のどれでもかまいません。生徒には、インターネットにつながる端末が必要です。できれば2人に1台(ノートパソコン、タブレット、スマートフォンのいずれか)用意してください。インストールもアカウントも不要です。どのレッスンも画面の見方の短い説明から始まり、科学用語はタップすると説明が出ます。
関連する単元
- シナプスと神経伝達物質
- それぞれの層は、シナプスを通して次の層へ信号を渡します。科学者は、記憶そのものが、ケニヨン細胞から出力ニューロンへのシナプスの強さの変化だと考えています。
- ネットワークの構造が行動を決めるしくみ
- この経路は層がつながった鎖なので、ケニヨン細胞をオフにすると、においが入ってきていても出力ニューロンは暗くなります。
- 興奮と抑制
- 「刺激する」は細胞を興奮させ、「オフにする」は細胞をはたらかせないままにします。この2つがレッスンの道具です。回路のこの部分では、どの層も次の層を興奮させます。
45分の授業案
- 5分
導入の問い
「前にかいだことのあるにおいだと、脳はどうやってわかるのでしょう?」とたずねてください。いくつか予想を聞いたあと、今日はその答えをハエの中に探しにいく、と伝えます。
- 10分
「しくみを見せて」で実演
授業モードで、みんなで見られる画面(プロジェクター、テレビ、パソコンの画面)にレッスンを映し、「しくみを見せて」を押してください。再生に合わせて、各ステップを声に出して読みます。共有の画面がないときは、生徒が自分の端末で同じ実演を開きます。実演はレッスンの問いのところで止まります。ここではまだ答えを言わないでください。
- 20分
生徒が自分で試す
生徒は2人1組で、自分たちの端末とワークシートを使って取り組みます。タップする前に毎回予想を書き、レッスンを進めて問いに答え、自由実験も試します。
- 10分
話し合い
レッスンの問いに対する各ペアの答えを集め、そのあと下の話し合いの問いを使ってください。最後に、このモデルが省いていることを取り上げます。
ストーリー
ドロールは熟したモモのにおいをかぎ、前にそのにおいが食べ物へ導いてくれたことを思い出して、風上へとたどっていきます。このストーリーは、「その記憶は脳のどこにしまわれているのか?」という問いにつながります。
レッスンは、ハエのドロールが登場する短いマンガから始まります。コマを読み聞かせるか、生徒に読ませてください。1分ほどで終わります。最後のコマは、ミッション達成の画面にもう一度出てきます。
ハエからニューロンまでのズーム
レッスンを画面に映してください。4つの段階のそれぞれで止まり、その段階の問いをたずねてからズームインします。段階のボタンを押すと好きな段階に移れます。虫めがねのボタンを押せば、レッスンのどこからでもズームを開き直せます。
- ハエ
この体のどこに鼻がありそうですか?
- 脳
脳は頭の大部分をしめています。何がそんなに場所をとっていると思いますか?
- 回路
においはオレンジ色の細胞から入ってきます。最後に届くのは何色だと思いますか?
- ニューロン
この点は1回の発火です。1個の細胞は、においのことを脳のほかの部分にどうやって伝えられるでしょうか?
体と脳は別々の2匹のハエのもので、実際の大きさの比率で重ねて表示しています。このことをクラスに伝えてください。
予想
「オフにする」のステップの前に、生徒は何が起きると思うかを選びます。まず手を挙げさせて、クラスの予想を確かめてください。採点はなく、予想がはずれても何も失いません。
においの仕分け係が、まもなくオフになります。何が暗くなるでしょうか?
想定される答え: ピンク色の記憶の読みとり係だけです。
においの仕分け係がオフでも、においは入ってくるので、オレンジ色と黄色は光ります。しかし、ピンク色の記憶の読みとり係にはパターンが届きません。
各ステップで生徒に気づかせたいこと
- ステップ1
ハエは触角(2本のアンテナ)でにおいをかぎます。「刺激する」をタップして、においを送りこんでください。オレンジ色のニューロンが光るのを見てみましょう。
光るのはオレンジ色の嗅覚受容ニューロンだけです。信号は回路の端の1か所から始まり、全体でいっせいに始まるわけではありません。
- ステップ2
もう一度「刺激する」をタップして、色を目で追ってみましょう。黄色の投射ニューロン(においの配達係)が、においを脳の奥へ運びます。次にそれを受けとるのは、青いケニヨン細胞(においの仕分け係)です。
色はオレンジ色、黄色、青の順に光ります。信号は層を1つずつ順に進みます。
- ステップ3
もう一度「刺激する」をタップしてください。今度は、ピンク色の出力ニューロン(記憶の読みとり係)に注目しましょう。青い細胞のパターンを読みとる細胞です。
ピンク色の出力ニューロンは最後に光ります。しかも、青いケニヨン細胞が光ったあとでなければ光りません。
- ステップ4
今度は、ケニヨン細胞(においの仕分け係)の「オフにする」をタップしてください。においはこちらで送ります。何が消えるでしょうか?
オレンジ色と黄色は光りますが、青は暗いままで、ピンク色はほとんど消えます。においは入ってきたのに、その先へ進めなかったのです。
- ステップ5
ケニヨン細胞(においの仕分け係)の「オンにする」をタップして、元に戻しましょう。同じにおいを送ります。
ケニヨン細胞をオンに戻すと、すぐにピンク色がもどります。何もこわれてはいません。信号の通り道がなかっただけです。
レッスンの問いと、想定される答え
ケニヨン細胞(青い細胞)をオフにしました。ピンク色の細胞が暗くなったのはなぜでしょう?
正しい選択肢: 青い細胞が、においごとのパターンをピンク色の細胞に渡しているから。
ケニヨン細胞は、においごとのパターンを出力ニューロンに渡します。ケニヨン細胞がオフのときも、においは受容ニューロンと投射ニューロンまでは届きますが、出力ニューロンには読みとるものが届きません。「においが入ってこなかった」と答えた生徒には、オレンジ色と黄色の細胞をもう一度見るよう促してください。
話し合いの問い
- ケニヨン細胞をオフにしている間も、においは脳に入っていました。それはどうしてわかりますか?
- ハエが「このにおいは砂糖のしるしだ」と学習したとします。この回路のどこに変化が起こると思いますか?
- かわりに黄色の投射ニューロンをオフにしたら、何が見えると思いますか?自由実験で確かめてみましょう。
よくある誤解
生徒が考えがちなこと: 記憶は、ファイルのように1つの細胞の中に入っている。
対応のしかた: ピンク色が青を読みとるステップにもどってください。記憶は1つの細胞の中ではなく、2つのグループをつなぐたくさんの結合の強さにあると考えられています。
生徒が考えがちなこと: 細胞をオフにすると、その細胞は死ぬか傷つく。
対応のしかた: 最後のステップをもう一度実行してください。ピンク色の光はすぐにもどります。オフにした細胞は無傷で、発火していないだけです。
生徒が考えがちなこと: このレッスンは、ハエがにおいを学習するようすを見せている。
対応のしかた: 見せてはいません。モデルが示すのは記憶がたくわえられるはずの場所で、モデルの結合が変わることはありません。そのことをはっきり伝えたうえで、何を加える必要があるかをたずねてください。
本物の部分と、単純化した部分
本物の部分
- レッスンに出てくるニューロンとつながりは、すべて1匹の本物のショウジョウバエの配線図からとったものです。細胞どうしのシナプスの数も本物です。
- 4つの細胞グループと、それらがつながる順番は、ハエの本物の嗅覚経路です。
単純化した部分
- 活動のようすは、すべてのニューロンが同じ基本ルールにしたがう単純なシミュレーションで、スローモーションで再生されます。
- 「刺激する」は、すべての嗅覚受容ニューロンを一度に発火させます。本物のにおいは、一部の種類の受容ニューロンだけを、あるパターンでオンにします。
- このモデルでは何も学習しません。報酬の信号がなく、結合も変わらないからです。
重要な用語
- 触角.
- ハエの頭にある2本の突起です。ハエは、あなたが鼻でにおいをかぐように、触角でにおいをかぎます。
- 嗅覚受容ニューロン.
- 触角にある神経細胞で、においがつくと発火します。どんなにおいも、ここから始まります。
- 触角葉.
- ハエの脳の中で、においが最初に届く場所です。ここで嗅覚受容ニューロンが投射ニューロンに信号を渡します。
- 投射ニューロン.
- においの信号を、触角葉から脳の奥のキノコ体まで運ぶ神経細胞です。
- キノコ体.
- 昆虫の脳にある、キノコのような形の部分です。ここでにおいが仕分けられ、においの記憶がたくわえられます。
- ケニヨン細胞.
- キノコ体にある小さな神経細胞です。においごとにちがう少数の細胞がオンになるので、においにはそれぞれのパターンができます。
- 出力ニューロン.
- ケニヨン細胞のパターンを読みとり、脳のほかの部分へ伝える神経細胞です。科学者はMBON(キノコ体出力ニューロン)と呼びます。
カリキュラムとの対応
この項目はまだ記入されていません。公式の生物カリキュラムとの対応は、生物の教員と確認を進めているところです。