教師用ガイド · レッスン3
30ミリ秒の脱出
ハエたたきの下からハエを逃がす「電線」を見つけましょう。
レッスンのアドレス: wiredmind.app/ja/modules/escape
学習目標
生徒は、目から脚の筋肉まで約30ミリ秒で伝わる反射をたどり、すばやい脱出が巨大線維というただ1つのつなぎ目にかかっていることを示します。
用意するもの
みんなで見られる画面があると便利ですが、必須ではありません。プロジェクター、テレビ、クラス全員に見えるパソコンの画面のどれでもかまいません。生徒には、インターネットにつながる端末が必要です。できれば2人に1台(ノートパソコン、タブレット、スマートフォンのいずれか)用意してください。インストールもアカウントも不要です。どのレッスンも画面の見方の短い説明から始まり、科学用語はタップすると説明が出ます。
関連する単元
- 反射弓
- 3つの部分からなる反射の経路がまるごと見られます。感覚の側(目が見たものを知らせる接近検出ニューロン)、中継(巨大線維)、運動ニューロン(ジャンプニューロン)です。膝蓋腱反射とちがい、この中継は脳を通ります。
- ネットワークの構造が行動を決めるしくみ
- 信号は、数百個の接近検出ニューロンから巨大線維へとしぼりこまれます。このボトルネックがあるので、1種類の細胞をオフにするだけで行動が消えます。
- シナプスと神経伝達物質
- 巨大線維は太く、そのため信号が速く伝わります。本物のハエでは、いちばん速い種類である電気シナプスも使います。モデルにあるのは化学シナプスだけです。
45分の授業案
- 5分
導入の問い
「ハエをたたくのは、どうしてこんなにむずかしいのでしょう?」とたずねてください。いくつか考えを集めたあと、これからハエの脱出にかかる時間をはかり、そのうらにある「電線」を見つける、と伝えます。
- 10分
「しくみを見せて」で実演
授業モードで、みんなで見られる画面(プロジェクター、テレビ、パソコンの画面)にレッスンを映し、「しくみを見せて」を押してください。再生に合わせて、各ステップを声に出して読みます。共有の画面がないときは、生徒が自分の端末で同じ実演を開きます。実演はレッスンの問いのところで止まります。ここではまだ答えを言わないでください。
- 20分
生徒が自分で試す
生徒は2人1組で、自分たちの端末とワークシートを使って取り組みます。タップする前に毎回予想を書き、レッスンを進めて問いに答え、自由実験も試します。
- 10分
話し合い
レッスンの問いに対する各ペアの答えを集め、そのあと下の話し合いの問いを使ってください。最後に、このモデルが省いていることを取り上げます。
ストーリー
ドロールが休んでいるとハエたたきがふり下ろされ、約30ミリ秒で跳んで逃げます。このストーリーは、「脳の中の何が、そんなに速くはたらけるのか?」という問いにつながります。
レッスンは、ハエのドロールが登場する短いマンガから始まります。コマを読み聞かせるか、生徒に読ませてください。1分ほどで終わります。最後のコマは、ミッション達成の画面にもう一度出てきます。
ハエからニューロンまでのズーム
レッスンを画面に映してください。4つの段階のそれぞれで止まり、その段階の問いをたずねてからズームインします。段階のボタンを押すと好きな段階に移れます。虫めがねのボタンを押せば、レッスンのどこからでもズームを開き直せます。
- ハエ
ハエが逃げるには、この体のどの部分が必要でしょうか?
- 脳
信号は目から始まり、脚で終わります。とちゅうでどこを通らなければならないでしょうか?
- 回路
青い細胞は数百個、赤い線は左右に1本ずつのたった2本です。この道すじについて、何に気づきますか?
- ニューロン
この1個の細胞は、とびぬけて太くなっています。太い電線は、なぜすばやい脱出の役に立つのでしょうか?
体と脳は別々の2匹のハエのもので、実際の大きさの比率で重ねて表示しています。このことをクラスに伝えてください。
予想
「オフにする」のステップの前に、生徒は何が起きると思うかを選びます。まず手を挙げさせて、クラスの予想を確かめてください。採点はなく、予想がはずれても何も失いません。
脱出用の電線が、まもなくオフになります。脚をけり出す係はどうなるでしょうか?
想定される答え: 暗いままです。
接近検出ニューロンは発火するので、ハエにはハエたたきが見えています。しかし巨大線維がオフだと、信号はジャンプニューロンに届かず、ジャンプニューロンは暗いままです。
各ステップで生徒に気づかせたいこと
- ステップ1
ハエたたきがハエめがけて振り下ろされます。「刺激する」をタップして、接近検出ニューロン(ハエたたき発見係)を発火させましょう。
青い接近検出ニューロンがまず光り、ほとんど同時に赤い巨大線維が続きます。
- ステップ2
もう一度「刺激する」をタップしてください。巨大線維(脱出用の電線)をたどって、神経索(脊髄のようなもの)まで下りていきましょう。
活動が巨大線維を下って神経索に入り、黄色のジャンプニューロンがハエの時間で30ミリ秒以内に発火します。
- ステップ3
今度は、巨大線維(脱出用の電線)の「オフにする」をタップしてください。ハエたたきはこちらで送ります。ジャンプニューロン(脚をけり出す係)をよく見ていてください。
青は光りますが、赤は暗いままで、黄色は発火しません。ハエにはハエたたきが見えていたのに、その知らせが脚まで届かなかったのです。
- ステップ4
巨大線維(脱出用の電線)の「オンにする」をタップして、元に戻しましょう。同じハエたたきを送ります。
巨大線維をオンに戻すと、すぐに黄色がまた発火します。
レッスンの問いと、想定される答え
巨大線維(脱出用の電線)をオフにしました。脚をけり出す係が暗いままだったのはなぜでしょう?
正しい選択肢: 脱出用の電線が、ジャンプの信号を脚をけり出す係に運んでいるから。
巨大線維は、ジャンプの信号を接近検出ニューロンからジャンプニューロンへ運びます。巨大線維がオフのときも、青い細胞が光るのでハエにはハエたたきが見えていますが、信号は脚に届く前に止まります。レッスンの最後のステップにあるとおり、本物のハエにはもっとゆっくり逃げる方法もあります。
話し合いの問い
- この脱出は、まばたきよりも速く起こります。経路のどんな特徴が、これほどの速さを生んでいるのでしょうか?
- 速い脱出ルートを1つと、もっと遅いルートをいくつかもっていると、動物にとってどんな点で役に立つでしょうか?
- この経路を、熱いものから手を引っこめるときのような、知っているヒトの反射とくらべてみましょう。同じところと、ちがうところはどこですか?
よくある誤解
生徒が考えがちなこと: ハエは、ジャンプしようと決めている。
対応のしかた: いちばん速いジャンプは、反射のようにはたらきます。配線が信号をそのまま最後まで運びます。もっとゆっくりした脱出なら、跳ぶ向きをねらう時間が少しありますが、じっくり考える時間はありません。
生徒が考えがちなこと: ハエがジャンプしなかったのなら、ハエたたきが見えていなかったのだ。
対応のしかた: オフにするステップで、この2つを切り分けられます。接近検出ニューロンは発火しているので、ハエには見えていました。見ることと動くことは、1つの経路の別々の段階です。
生徒が考えがちなこと: 脳全体から見れば、ニューロン1個は重要ではない。
対応のしかた: ここでは、1種類の細胞がすばやい信号のすべてを運んでいます。経路が少数の細胞にしぼりこまれるところでは、その1つひとつがとても重要になります。
本物の部分と、単純化した部分
本物の部分
- レッスンに出てくるニューロンとつながりは、すべて1匹の本物のショウジョウバエの配線図からとったものです。細胞どうしのシナプスの数も本物です。
- 接近検出ニューロン、巨大線維、ジャンプニューロンは本物で、その間をつなぐ道すじも本物です。
単純化した部分
- 活動のようすは、すべてのニューロンが同じ基本ルールにしたがう単純なシミュレーションで、スローモーションで再生されます。
- 30ミリ秒という値は、ハエの記録ではなく、モデルの単純な時間のルールから出たものです。それでも現実的な範囲に収まっています。
- 「刺激する」は、すべての接近検出ニューロンを一度に発火させます。本物のハエたたきは、視界の中で大きくなるにつれて、少しずつニューロンをオンにしていきます。
重要な用語
- 接近検出ニューロン.
- ハエの目の奥にある神経細胞です。近づくハエたたきのように、視界の中で何かが急に大きくなると発火します。科学者はLC4、LPLC2と呼びます。
- 巨大線維.
- 脳から神経索までのびる、とても太い神経細胞です。ハエのいちばん速い脱出の信号を運びます。ハエには左右に1本ずつ、2本あります。
- 神経索.
- ハエにとっての脊髄です。胸にある神経細胞の束で、脚と羽を動かします。
- ジャンプニューロン.
- まん中の脚のジャンプ用の筋肉を縮ませる運動ニューロンです。これでハエは空中へ飛び上がります。
- 反射弓.
- 反射がたどる道すじです。感覚ニューロンから、1つ以上の中継の細胞を通って、筋肉を動かす運動ニューロンへ伝わります。
- 感覚ニューロン.
- 光やにおいなど、外の世界のできごとをとらえて脳に知らせるニューロンです。
- 運動ニューロン.
- 筋肉へ指令を運び、筋肉を縮ませるニューロンです。
- 電気シナプス.
- 2つのニューロンを直接つなぐ通路で、信号をほとんどおくれなく伝えます。レッスンのもとになっている地図には、化学シナプスだけが記録されています。
カリキュラムとの対応
この項目はまだ記入されていません。公式の生物カリキュラムとの対応は、生物の教員と確認を進めているところです。